アトピー性皮膚炎の、「治療の問題点と新しい治療法」についてパート2


軽症から中等症の皮膚炎患者の大半はコルチコステロイド外用薬で十分な効果が得られます。

しかし、ステロイド外用薬の長期使用には
安全性上の懸念があり(特に顔面など敏感肌の場合)、
またカルシニューリン阻害外用薬の使用に関する
ブラックボックス警告において悪性腫瘍の理論上のリスクが
指摘されているため、新しい外用薬が緊急に必要である状況に変わりはありません。

一方、中等症から重症の患者さんの場合、米国食品医薬品局(FDA)が唯一承認している全身薬は
コルチコステロイドの全身投与ですが、長期使用による安全性上の懸念や、中止に伴うリバウンドの傾向があります。

さらに、全身ステロイド薬の代替療法としての光線療法および免疫抑制剤
(シクロスポリン、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリンなど)は、
安全性上のリスク、臨床検査値を頻回にモニターする必要性、治療効果のばらつきによって、使用が限定されています。

新しい治療法ー

ヒトの皮膚には細菌、ウイルス、真菌といった多様な生態系が常在しており、皮膚マイクロバイオームと総称されます。
皮膚マイクロバイオームは病原微生物からの保護、バリア保護の強化、免疫防御の促進に不可欠な役割を果たしていると考えられています。

skin

湿疹の重症例には一般的に広域抗生物質が使用されますが、
広域抗生物質は有益な菌種も含めて大半の細菌を死滅させるため、
皮膚マイクロバイオームが不均衡になります。

したがって、マイクロバイオーム標的治療の目標は、
ADにおける黄色ブドウ球菌のように疾患に関連する細菌だけを死滅させ、
一部の菌株による抗生物質耐性獲得のリスク上昇を抑制することです。

健康な人の皮膚では、表皮ブドウ球菌の特定の株が
ランチビオティックと呼ばれる強力な抗菌分子を産生することが
研究で明らかになっています。
AD患者の皮膚でこれらの有益な菌株が検出されることは非常にまれです。


ランチビオティックは、ヒト免疫系で産生される抗菌分子の一種であるLL-37との相乗作用により、
メチシリン耐性株(MRSA)を含む黄色ブドウ球菌を選択的に死滅させ、黄色ブドウ球菌毒素の産生も抑制します。

これまでに実施された2つの独立した第I相試験では、ランチビオティック投与の安全性と黄色ブドウ球菌を
有意に減少させる効果が認められ、大半の患者において症状が改善しています。

これはマイクロバイオーム標的療法の開発に期待している人々にとって朗報です。

新たな外用薬・全身薬ー

マイクロバイオーム標的治療の標的は主に2型免疫系です。

最近、小児と成人の両方を対象として標的治療の2種類の新薬、crisaborole 2%軟膏(非ステロイド性外用剤)と
デュピルマブ(IL-4を阻害するモノクローナル抗体の皮下注射製剤)がFDAに承認されました。

このパイプラインには他にも数多くの新薬候補があります。

新しい外用薬としてアリル炭化水素受容体アゴニストであるtapinarofなど複数のヤヌスキナーゼ阻害薬の臨床試験が進められています。


承認されたこの2剤の他にも、IL-13やIL-31、IL-33、OX40、胸腺間質性リンパ球新生因子を標的とする生物学的製剤の臨床試験が現在進行中です。
試験では極めて高い有効性が認められる一方、長期安全性に重大な懸念は示されていません。

最終回の次回は、「アトピーに関するマネジメントアプローチ」についてです。