前回は宇宙での医学の役割と目的

についてお話ししました。
今回は、「宇宙環境の特徴と身体への影響」についてお話しします。

地上とは異なる特殊な宇宙環境と疾患


🌟微小重力状態または無重力状態により、多様な生物で劣化作用が生じる可能性があり、
 人体において重要な影響は固有受容感覚の喪失、体液分布の変化および筋骨格系の機能低下の3点です。

🌟過酷な環境条件として、激しい寒暖差、超高真空、原子状酸素および
 高エネルギー放射線への曝露などが挙げられます。

🌟地球低軌道(LEO)では、宇宙飛行士は地球の磁場により有害な放射線から保護されています。
 地上にいる人々と比べれば、宇宙飛行士はより強い放射線にさらされることになりますが、
 それでも地球の磁気圏に守られているのです。
 LEOは、過酷な宇宙環境で技術産物および材料を対象として加速劣化試験を実施するうえで貴重な環境です。

🌟LEO内に位置するISSの特有の利点として、大気モデルから農業まで、さまざまな分野で洞察が得られる点があります。

🌟宇宙飛行は、創薬、ナノテクノロジー、材料科学、組織工学、農業、 
 地球観測および技術的進歩などの側面で研究開発に役立っています。

最近の研究では、宇宙飛行前、宇宙飛行中および宇宙飛行後に、宇宙飛行士の臨床的パラメータおよび病態生理学的パラメータの調査によって、脊髄、眼および脳で細胞変化が認められ、地球上で確認されているような疾患
(特に老化に伴う疾患)に起因する機能低下に類似している複数の症例が認められました。

関節炎、骨粗鬆症、緑内障および回転性めまいなど、
これらの症例の多くは現在のところ根治的治療法が存在しません。

また、宇宙飛行士の老化や宇宙空間がもたらす未知の作用が宇宙飛行士の人体に与える影響についても研究が行われています。


宇宙空間に滞在することで生じる心理的な影響の分析では明確な結果が得られていませんが、
クルーが経験する大きなストレスに加え、異なる環境の変化に人体が適応しようとすることを踏まえると、
不安、不眠症およびうつ病が生じる可能性があります。

今回は特殊な環境下における人体、そして疾患への影響についてお話ししました。

次回は「宇宙空間における微生物と免疫の研究」についてお話しします。

次回の掲載をお楽しみに。