
2022年11月、人工知能(AI)の研究開発企業であるOpenAI社がChatGPT(generative pre-trained transformer)を公開しました。
ChatGPTはGPT-3.5シリーズの大規模言語モデルを組み込んだ今話題の機械学習・AI搭載型チャットボットです。
自然言語処理(NLP)システムを使って人間の会話を模倣し、会話の流れを遮ることなく対話ができるよう設計されており、会話形式でユーザーに応答。
本モデルは状況を理解できるだけでなく過去のやり取りからも学習できるため、高い対応力を備えた技術システムとなっています。
このように対話型であるため、ChatGPTはあらゆるタイプの質問に応答でき、間違いを認めたり、誤った前提に異議を唱えたり、不適切な質問を拒否することも可能なのです。
ChatGPTのヘルスケアシステムへの応用
現代の医療では膨大な量のデータが生み出されていますが、入れ替わりが早く、構造も複雑なため、有用なエビデンスを迅速に構築する効率的な方法が求められています。
従来のアプローチでは時間もコストもかかることから、問題に速やかに対応できるよう、AIと機械学習処理を応用して医療データを総合的に処理する必要性も高まっています。
ChatGPTにより、このような需要に応えられる可能性があることから、今回は特に医療経済・アウトカム研究(HEOR)へのChatGPTの応用による自動化、効率化、コスト削減の可能性について重点的にお話ししたいと思います。
ChatGPTのHEORへの応用
医療経済は医療行為のアウトカムの測定と評価を伴います。
アウトカム研究は一連の科学分野で構成され、患者に対する医療行為の効果が評価されます。
したがって医療経済とアウトカム研究の専門学会である国際医薬経済・アウトカム研究学会(ISPOR)が掲げるとおり、HEORは医療経済とアウトカム研究の2分野を融合したものであり、これら2分野が一体となって、医療の意思決定者に強力なデータと洞察を提供することを目指しています。
無駄な診療がもたらす潜在的な資源喪失を避けるため、医療のエコシステムにはHEORが不可欠となっています。

例えばHEORは、治療の遅れを招いたり、結果として特定の疾患の生存率や寛解率を低下させるような不要な処置を特定するのに役立てられ、患者の医療費削減に重要な役割を果たしています。
ChatGPTにより、医療の分野で急速に増加しているデータを医療研究者が処理し、統合するのを支援できれば、費用対効果の高い治療や戦略を最大限活用できるようになるでしょう。
このように、ChatGPTはHEORの有用なツールとなりうると期待されており、ChatGPTを利用すれば、例えば電子健康記録(EHR)や携帯機器によって生成されるデータなど、膨大なデータセットからの複雑な情報の検索が容易になる可能性があります。
また、ChatGPTは疾患の検出や分類の改善、従来の方法では発見しにくい共通の特徴をもつ患者集団の特定、患者に合った別の治療を選択した場合の健康アウトカムの経過予測にも利用可能。
ChatGPTの機械学習と深層学習は、経験から学び、時間とともにアルゴリズムを向上させることを役割としているため、HEORの課題を遂行するのに活用することもできるのです。
目的とする課題を遂行するために膨大なデータを理解して具体的かつ正しい行動へと転換するこのプロセスは、ヘルスケア産業に恩恵をもたらすと期待され、疫学調査、診療報酬データ、患者調査、疾患登録システムから得られたデータセットを組み合わせて効率的に解析を行うのに利用できると考えられます。
また、ChatGPTはユーザーに対して結果をリアルタイムで更新するため、(国内外の)様々な領域の医療システムに応用できる可能性も見出しています。
